DJでなくても音楽に携わる人ならば一度は自分の楽曲をアナログレコードにしたくなるものですが、実際にアナログレコードをプレスするのは大変な苦難が待ち受けています。プレスする最小ロット数200~300枚のレコードをこの日本の特殊な音楽市場で売り切るのは容易な話ではなく、完売しても利益なんか出ません。そんな状況でもレコードをリリースすることが音楽文化を守ることに繋がるので、愚痴をこぼしてもしょうがないですが、リリース前にレコード屋さんに営業に行くと皆優しいですよ。笑

 

そんなロマンとリスクで成り立っているアナログレコードを1枚からオーダーメイドできる”CUT&REC“が、2017年4月22日のレコードストアデイにβ版のwebサイトをローンチします。盤のサイズも7,10,12インチの各サイズに対応し、フルカラージャケットを付ける事も可能です。

このサービスは既に試験的運用が始まっているのですが、β版がローンチされるとサイト上で音源を入稿したり、ジャケットとレーベルをデザインして完成イメージを360°3Dプレビュー表示可能、というネット時代に相応しいサービスになります。また、料金体系も変わり、ジャケ無しでレコードだけ切るということも可能になるそうです。

 

 

このCUT&RECはサービス開始前から僕もテスター的にお世話になっていて、音質などのフィードバックを返したり、既にDJの現場で使ったりしています。レコード盤の質は市販のものと同じなので現場で使うにしても音質の劣化や針飛びなどの不安も無く普通に使えています。

 

どのようにカッティングしているのか

さてこのCUT&RECが、どうやってレコードをカッティングしているか動画が残っていました。これは2016年のTokyo Dance Music Eventでデモしていたダイレクトカッティングの模様です。ELEKTRONの機材から出るサウンドをそのままレコードにカッティングしています。

昔はこれと同じ手法で、バンドの演奏をテープに録音せずにそのままレコードにカッティングする手法があり、現代のDAWに慣れた感覚からすると昔の音楽人はすごい!と思います。

実際はこのターンテーブル上にあるごつい機械がカッティングしていて、アームとカートリッジが付いているのは、カッティングした音をモニタリングするためのものだそうです。

 

 

カッティングしたレコードの音質

さて、こうしてできたレコード盤は市販のアナログレコードと同じ感じように取扱いや再生ができます。

気になる音質面は予想とは違って原音に近く、アナログ特有の滑らかな高域の落ち方はするものの、デジタル臭い音はちゃんとデジタル臭さが残ります。過去に自分がリリースした12インチと比べても原音に近い印象で、若干硬めで高域寄りなバランスかなと思いましたが、この辺は盤のロットやカッティング次第で変わりそうな感じがします。アナログレコードの音に幻想を抱くと肩すかしを食らうかも知れませんが、実際にプレス工場でプレスしても無条件に「いい音」や「あの音」になるわけではありません。

耐久性に関しては市販の盤と同品質とのことですが、現場でかけている分には音が変わるような感じもなく、僕が切ってもらったレコードはまだ摩耗の限界まで達していません。スクラッチしても大丈夫だそうです。僕はできないですが…

下の写真を見るとレーベル面が少し浮いていますが、上から押さえたら普通に貼れました。正式サービス開始時にはこの辺がちゃんとしている事を期待しましょう。笑  現在はもっと粘着力の強いレーベルを使用しているそうです。

 

 

 

音質に大きな影響を与える溝幅

話は少し脱線しますが、レコードをカッティングする時はレコードの溝幅が音質に大きな影響を与えます。例えば収録時間を長めにすると、必然的にレコード1周あたりの溝幅が細くなって音量が下がっていきます。そのため12インチであれば33回転で片面12〜14分くらいが収録時間上限の目安。これを超えても収録は可能ですが、音量・音質ともに低下していきます。

また、45回転でカッティングすれば同じ時間でも針がトレースする距離が長くなる=情報量が増えるので、音質的には有利になります。しかし、長い収録時間を無理矢理45回転でカッティングすると今度は溝幅が細くなって音量・音質ともに低下するので、45回転でカッティングする場合は片面あたり7分が限界になるでしょう。このバランスの取り方はアナログレコードならではの難しさです。

僕は初期の頃から何枚かカッティングして貰っていましたが、長めの収録時間を45回転でカッティングするような無理をすると、ちゃんと高域が落ちるアナログ的な劣化をしていました。テープとも違う独特の劣化具合ですが、余程の意図が無い限りやらない方が良いと思います。笑

 

 

 

 

これからレコードをリリースしようとしている人にこそオススメ

さて、これを見ている人の中には、これからプレス工場で初めてのレコードをプレスしてリリースしようという方もいるかと思います。そういった方もレコードプレスする前に一度CUT&RECを試して、アナログレコードにするとどんなものになるのか体験した方が良いと思います。

というのは、カッティングとかレコードプレスといっても結局はメディアに複製する行為なので、マスターがしっかりしていればしっかりした音で鳴るし、そうでなければそれなりですまた、複製先のメディアは不安定なアナログメディアなので、デジタルメディアと違ってそっくりそのままコピーするという事は出来ず、ちょっとした事が音に影響を与えます。

 

自分もそうでしたが「プレスすればどんなマスターでもあの音になる」とアナログレコードの音に過剰な幻想を抱いてしまうと、アナログプレスに不向きなマスターを作って不満の残る仕上がりになる事でしょう。

失敗は成功の母というものの、アナログレコードをプレスして仕上がりが悪いと、財布にもメンタルにもかなり大きなダメージをくらいます。

300枚の12インチレコードをプレスすると30万円前後のコストと半年以上の納期がかかります。それだけのコストと時間をかけたのに聞くに耐えない音質であった場合、目の前の在庫の山を目にして「これどうするんだよ…」と音楽を辞めたくなっても不思議ではありません。

昔は友達のレーベルからアナログリリースしたけど仕上がり悪くてその友達と喧嘩した、なんて話も聞きました。気持ちはよくわかります。笑

アナログレコードはそれだけのリスクがあるからこそロマンがあるわけですが、音楽辞めたくなるようなリスクを減らすためにも、アナログレコードに抱いていた勘違いを無くすためにも、一度こうしたサービスを試してみた方が良いと思います。

 

CUT&REC
http://cutnrec.com

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