以下はAbleton Meetup Tokyoのフォーラムに投稿した記事ですが、日本語のこういった情報はないに等しいので、こちらにも転載・加筆します。視覚障害者の方がどんな感じでLiveを使っているか全く想像できないだけに、個人的にも興味のある分野です。
視覚障害者の方から、どうしたらLiveを使うことができるか相談がありました。調べてみたらこの手の日本語の情報は皆無に等しいですね…
という訳でこの辺のノウハウを知っている方いますでしょうか?
僕の方でも各国の認定トレーナーから教えてもらったアプローチがあるので、翻訳したものを載せておきます。
テキスト読み上げ(Text to Speech)を使ったアプローチ
ケース1
mac+Logicのレッスンを受けていた視覚障害者は、mac付属のtext to speechを使っていた。その人は介助者が隣に座ってサポートしていたのでレッスンについていくことが可能だった。
(注:LogicやGarageBandは音声でも操作できるそうです)
ケース2
text to speechを使っている視覚障害者の生徒がいたが、喋る速度を聞き取れるかぎり早くして使っていた。
その生徒はLiveの操作方法を熟知していたので、目が見える人と変わらない速度で操作していた。
しかし、それはAbleton Pushが登場する前の話で、(Pushのように)実際に触ることのできるインターフェースを使った方が操作や演奏は簡単そうである。
https://www.ableton.com/ja/push/
ハードウェアを使ったアプローチ
ケース3
視覚障害者の生徒にPush 1を寄贈したら、パッドの厚みがあるので今どこを操作しているかわかりやすそうだった。(Push 2はパッドが薄くなっている)
Live 9.5から内蔵プリセットのサウンドが自動でプレビューできるので、欲しいサウンドを見つけやすくなっていた。
ケース4
視覚障害者の子供にAbleton Liveを使ったDJを教えていたが、ハードウェアのコントローラーを使い、Liveをスタンドアローンのハードウェアのように使いこなせていた。text to speechを使うのはかなりの忍耐を要求されたようだ。
もしPushが合わないのであれば、他のハードウェアを使ったり、必要に応じてコントローラーをカスタマイズするのが良いだろう。
ケース5
イコライザー用だけど、HaptEQという視覚障害者むけのハードウェアがある
http://www.aaronmkarp.com/hapteq/
同じくオーディオの波形を「感じる」ためのHaptic Waveというハードウェアもある。(注:オーディオ素材を試聴したり、選択範囲を指定しやすくするための装置のような感じです)
http://eavi.goldsmithsdigital.com/projects/haptic-wave/
今の所まとめられた情報はここまで。情報提供をしてくれた各国のAbleton認定トレーナーには感謝の限りです。まだまだこういった日本語の情報は少ないので、僕も継続的に取り上げていきたいと思います。
それでは、なぜこういう情報が大事なのでしょうか?
それは単なる綺麗事や人助けではなく、最近よく言われる「多様性」にあります。学問の見地からすると、多様性が確保されているコミュニティーは変化と発展をして持続し、そうでないものは先細りになって衰退します。
日本の音楽シーンに当てはめてかんがえてみると、いまだに男社会の上に、高齢化の影響でオッサンばかりになりつつあります。もっと女性・障害者・子供・お金が無い人・外国人などの業界的なマイノリティーと共存しないと、自分の首が締まっていきますよ…という訳です。
日本社会に当てはめて考えてみるとどうなるか、現状を見れば言わずもがなです。自分たちが生まれるより昔の日本は、八百万の神といった宗教観や豊かな食文化・数多い方言のように、当時のスケールで考えれば多様性に富んでいたと考えられますが、そこで止まってしまったようにも思えます。現代は交通網の発達により、もっと多様性に富まないと持続的な発展ができないというなんとも大変な時代なのかもしれません。
コメントを残す